■第52回土曜講座 開催報告

日時 2017年 7月8日(土) 14:00〜16:00
場所 武蔵大学8号館7階8702教室
【第一部】14:10〜15:00
 講演題目 
ドイツ・日本における事業発展と文化活動−起業から今日まで−
 講 師 伊藤光昌(1962年第10回経済学部卒、「佐藤進ゼミ」工場経営論)
 株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ 代表取締役会長
 2008年ドイツ連邦共和国功労勲章を受章

【第二部】15:10〜16:00
 講演題目
中小製造企業と競争優位−広域京浜地域企業を調査対象として−
 講 師  伊藤誠悟(本学経済学部教授)


第一部聴講メモ

 講演は、佐藤進先生から受けた薫陶を胸に、海外に雄飛すべく終戦後急速に復興するドイツのベルリンに渡り、ドイツ製造業全盛時代に製造業で実習された事から始まりました。
当時のベルリンは、冷戦下で、1961年に作られた物理的な壁によってソ連管理の東ベルリンと米英仏管理の西ベルリンに分断されていました。壁を往来する検問時の苦い経験や壁の近くに住んでいて聞いた越境者への銃声。日本人1人でドイツ人を使い会社運営する苦労と派遣元の倒産による過酷な現地会社整理業務を20歳代で経験されました。
 29歳で失業後、70年に設立された現在の会社の設立に関与し、76年にドイツ子会社社長に就任。合弁時代と米国企業傘下時代を経て79年に現体制として再出発して98年に店頭公開するまでの起業家ならではのご経験を話されました。そして、米国鉄鋼王で慈善家でもあった、A.カーネギーの墓碑の言葉を紹介されました。
 「自分より賢い人達をどうやったら傍に集められるかを知っていた者、ここに眠る。」成功は、自分より優れた賢い周り人達のお陰。カーネギーは、一流の人を探すのが旨い人で、人徳や人柄で一流の人達から支えられて事業を大成功させた人でした。
 本社の社長、会長を歴任され世界市場を相手に、半導体・液晶製造装置・ロボット向けの部品製造で、世界最先端技術の精密制御システムを提供する成長企業に育て上げられました。
 昨今、日経新聞に何度も有望企業として登場する同社の実質上のオーナーですが、自社美術館の一般開放などの文化活動にも注力され、短期志向の利益第一主義に異議を唱えられ、技能を磨き続ける大切さを説かれました。日本の製造業が世界の先端を走り続けるために必要な、揺るぎない信念を教えて頂いた講演となりました。

ご参考ホームページ https://www.hds.co.jp

(報告者:岩本茂樹、30回経済)



第二部聴講メモ

 銀行、自動車部品メーカー、シンタンク勤務の後、一橋大学、関東学院大学での研究を経て、2014年から本学で講義を続けておられる教授のお話は、実践に裏打ちされた経済の現状と問題点を浮き彫りにしつつ、明日への活力を感じさせる中身の濃いものであった。
 まさに、机上に留まらず、現場の経験と実態を知る者でなければ語れない本物の活きた経済の分析と、これからの日本で、我々が何を考え、何をすべきか、そんな問いかけを頂いた1時間であった。更なるお話をお伺いしたいと感じたのは私だけではないだろう。
 オープンイノベーションという言葉が大企業の観点で語られることが多かったこれまでの日本。然し今は中小製造企業にこそ求められ、競争優位を生む源泉になっている。それは環境変化に迅速に対応でき、小回りが利く柔軟な組織運営が可能だからと先生は仰る。その証左として、詳細なセグメンテーションにより独自技術やビジネスモデルを活かし、ニッチ市場に於いて極めて高いシェアを確保している中小企業が数多く存在していることが挙げられる。  一方、経営資源が限られ、人材確保、資金調達の悩みを抱える中小企業は研究開発活動への取り組みが低いことも事実だとのこと。そこで、外部知識の活用が有効な手段となって来るわけだ。例えば、大企業が出願登録しながら放置されている多くの特許を活用すること、大学や国費プロジェクトに参加するなど仲介者を活用すること、或は自動車業界等に顕著に見られる所謂「系列」への参加を図ること、これら外部知識の活用が、中小製造企業のイノベーションを推進する大きな柱になると先生は説く。まさに、日本経済が更なる発展を遂げるためには、力のある中小製造企業が外部知識を活用していく土壌を作り上げることが必要なのである。
 熱く語られる先生の言葉に引き込まれながら、経済人としての使命をあらためて強く感じた1日であった。

(報告者:広瀬壮二郎、28回経営)