■第54回土曜講座 開催報告

開催日時 平成30年2月10日(土)14:00〜16:00
開催場所 武蔵大学8号館7階8702教室

【第一部】14:10〜15:00
講演題目:日本の弁護士のアメリカ逆上陸の軌跡
講 師:桝田 淳二(武蔵高等学校同窓会会長)
    国際弁護士、学校法人根津育英会武蔵学園理事・評議員

桝田氏は、東京大学法学部在学中の1965年に司法試験に合格され、司法研修所を68年に終了されて弁護士となられました。
70年にニューヨークのコロンビア大学ロースクールに通われている頃、73年に完成した、思い出深い、旧ワールドトレードセンターの建設が行われていました。
74年に帰国されるまで、企業買収(M&A)の研究を続け、帰国後は日本で企業買収を手掛けるパイオニアとして活躍されました。
77年に法律事務所を設立し、短期間で大きく発展させました。
87年になると外国弁護士に関する法律が施行され、日本の40倍の弁護士数を誇る米国から多数の弁護士が日本へ進出しましたが、相互主義にもかかわらず日本から米国へ進出する弁護士はいませんでした。
92年、日本における大手事務所創業者の立場を投げ打ってアメリカへ逆上陸し、家賃の高いニューヨークの名門ビル内に法律事務所を創設しました。当初はアメリカから驚きで迎えられましたが、「Never Too Late」の精神でNY州の弁護士試験にも挑戦し95年に52歳で見事に合格しました。
2015年に帰国されるまでの20年間に渡って、次々と大型案件をリードできる国際弁護士の第一人者となられ、演題と同じ題名で日経新聞出版から出した本がベストセラーとなりました。
開拓者精神を持ち、年齢に関係なく、情熱を持って挑むことの大切さを改めて教えられる講演となりました。

(報告者:岩本 茂樹 30回経済)



【第二部】15:10〜16:00
講演題目:海を渡ったサムライ
−アントレプレナーシップの源流を求めて
講 師:高橋 徳行(本学副学長・経済学部教授)

第一部の国際弁護士である桝田淳二氏のアメリカでの法律事務所開設(起業)に関する講演を受けて、第二部の本学教授高橋徳行氏からは、安倍内閣の「ベンチャー・チャレンジ2020」の実現に不可欠なアントレプレナーシップ(起業家活動)に関して、独自のデータなどを用いながら、研究内容を発表した。
最初に示されたのは、企業の時価総額ランキング(2018年1月末時点)だ。上位10社は、アメリカや中国の企業が並び、日本は43位にトヨタ自動車がランクインしている。しかし、注目すべきは、上位10社の創業年である。10社中8社が1975年以降に創業した比較的に若い会社であることだ。
一方、国内のみの時価総額ランキングを見ると、上位10社のうち新しい会社はソフトバンクのみで、新しい力が出てきていないことが読み取れる。ここにこの講演のテーマでもある起業家活動が日本では足りないことを裏付けるデータが示された。
また、企業の年齢という観点でも先の上位10社で比較すると、日本が76.7歳に対して、世界は42.7歳と大きな隔たりがあり、日本に元気がない背景が浮き彫りになっている。他にも起業活動においてもアメリカや中国に対して、非常に消極的であるデータも示された。
高橋氏は起業活動が進まない日本人の原因として、「自分自身に自信を持てない?」「リスクを嫌う・安定志向?」「国際化への対応が苦手?」という仮説を立てた。
この問いに対して、高橋氏は、明治時代の岩倉使節団を例にあげた。西洋文明に直に触れた使節団が持って帰ってきた技術は、その後の様々なアントレプレナー(農工商出身の起業家)により国産化の道を歩んだ。
岩倉使節団やアントレプレナーは日本人であることを強く思い、また誇りに思っていたことが日本の近代化に貢献したといえるだろう。今の日本に必要なのは、政府が掲げる未来投資戦略(岩倉使節団の持ち込んだ近代化の技術)を実現するためアントレプレナーと同様、つまり日本に誇りを持ち、自信を持つことであり、そのリベラルアーツを武蔵大学では教育していきたいと高橋氏は語り、講演を締めくくった。

(報告者:間所 達郎 55回社会)