• 開催報告

第32回生涯学習講座「日本文化の礎 杉とヒノキをもっと知ろう」森林インストラクター・樹木医 石井誠治さん(22回社会)  

開催日時2024年7月6日(土)

 花粉症の原因とされ嫌われている杉とヒノキ、じつは日本の歴史をかたるうえで重要な役割を果たしているようです。
まず5種類の樹木の葉を見て、どれが杉の葉で、どれがヒノキの葉かと問われました。似ているのでわかりません。身近なようで知らないことが多すぎると実感。 

 木材の利用の変遷をみてみると、街路樹としてもなじみのあるケヤキは、江戸時代から建築材料として重宝され、橋などはケヤキで造られていました。杉やヒノキなどの針葉樹は主に柱として使われていたそうです。
縄文時代はどうだったのかというと、さかのぼること9,000年前、漆器製品を身につけた縄文人が遺跡から発掘されました。それまで漆器は中国から日本へ伝えられたといわれてきましたが、この発見により漆器の歴史は日本の方が古かったことがわかりました。縄文人は漆の新芽を山菜として食べていたこともわかっています。縄文時代の遺跡、静岡県の登呂遺跡からは巨大な杉から作った「矢板」が土の中から発掘されています。これにより杉やヒノキは縄文時代から日本人の暮らしに欠かせない樹木だったことがわかります。
 出雲大社は杉で造られています。しめ縄も杉。出雲大社の社殿の高さは、鎌倉時代までは48m、現在は24m。屋根は60cmにもなる檜皮葺き。檜皮は丈夫なので60年に一度葺き替えればいいとのこと。伊勢神宮は20年ごとに式年遷都が行われますが、これもヒノキが使われています。明治神宮の大鳥居は、昔はタイワンヒノキでしたが、2022年、創建102年で吉野杉を使って新しくなったそうです。お線香もほとんどが杉で作られています。
杉やヒノキは古くから私たちの暮らしに欠かせない樹木であり、まさに日本の歴史の礎を築いてきた樹木といえます。そう考えると、もっと興味関心をもって接していかなければならないし、日本各地の巨木や名木の保護活動も大事であると感じました。身近な植物に目を向けることで日本の風土や歴史に思いをはせることができました。

当日は猛暑だったので、外に出てキャンパスの散策は諦めましたが、石井さんが様々な植物をご用意くださったので、葉を触ったりにおいを確かめたりしながらお話を伺い、あっという間の2時間でした。

杉は、2番、ヒノキは5番でした。皆さんはお判りでしたか?

(報告者:村松真貴子 28回日文)

 

※平成30年12月以前の開催報告は、旧サイトでご確認下さい。