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【書籍紹介】瀬田勝哉(人文学部名誉教授)『木に「伝記」あり―巨樹イチョウの史料を探して全国を歩く』(朝日選書1048)
【書籍紹介】瀬田勝哉(人文学部名誉教授)
『木に「伝記」あり―巨樹イチョウの史料を探して全国を歩く』
(朝日選書1048)
著者:瀬田勝哉
出版社:朝日新聞出版
2025年4月刊 四六判 362ページ
定価:本体2,400円+税
通称「木ゼミ」を長く担当された、『木の語る中世』の著者・瀬田勝哉先生の最新作です。本書は、自然科学と人文科学が互いに補完しながら総合研究する「銀杏学」を提唱された、故堀輝三(てるみつ)氏から誘われ、先生が着手した22年越しの研究報告であるため、読者の関心に従い、様々な読み方・学びが可能です。主役は岡山県奈義町(なぎちょう)の菩提寺(ぼだいじ)境内にあるイチョウ。この木に関わった多様な人々と地域の歴史に関する内容が第三章以降です。第二章の東北から九州までの巨樹イチョウの調査結果、第一章と各章の所々に挿入されている文理双方の研究状況や、DNA調査で判明する事実なども実に興味深く、先生の授業を聴くように読めます。うかがった話を以下にまとめました。多くの方に本書をおすすめします。
イチョウの話は、ゼミOBOGでも、なじみがないと思います。日本文化学科の名称が変わった頃、教員による東アジア比較文化リレー講義が始まり、そこで1年生対象に4~5年だけ、年2回の講義をイチョウでやったのが唯一です。
武蔵の構内には、正門横に目通り周3mを越すイチョウがあります。講堂前にも大きなものがあります。イチョウは人間が植えないと始まりはありません。武蔵のあゆみとともに成長してきたイチョウがあることを、卒業生にもぜひ知っていただきたいと思います[毛塚編・文責]。
(1987卒 日文 毛塚万里)
《目次》
第一章 なぜ巨樹イチョウか―そもそもの私のミッション
第二章 全国にイチョウ史料を求めて
1 一歴史研究者の歩き方
2 津軽安藤氏本拠地のイチョウ―青森県深浦町北金ケ沢・関・深浦
3 被災史こそ重要と教えてくれたイチョウ―岩手県久慈市・長泉寺
4 女性・子どもの墓碑がイチョウの下に―大分県玖珠町平井・熊本県小国町下城
5 重要性に気づかれなかったイチョウ―東京都大田区西六郷・古川薬師安養寺
6 全国イチョウ資料(史料)に見る大きな傾向
第三章 『美作高円史』の衝撃―古文書が語る「享保五年」の事件
第四章 史料の発見者「寺阪五夫」を追う
第五章 「一四、一五世紀」のイチョウ―東アジアを視野に入れて
第六章 菩提寺とイチョウに何が起きていたのか―中世から再び近世へ
第七章 なぜイチョウの「祟り」は復活するのか―「菩提寺略縁起」の誕生
第八章 幻の年代記『菩提寺古今録』は語る―江戸後期から明治へ
第九章 国の「史蹟名勝天然紀念物」指定までの道程
第一〇章 菩提寺イチョウに吹く新しい風
《カバー裏の紹介文》
ある日、著者のもとに植物学者から共同研究への誘いの手紙が届いた。全国の巨樹イチョウを調べているが、中国・朝鮮半島から日本に渡来した時期を科学的な根拠によって明かしたい、歴史研究者のあなたの協力を得たい、という。
植物学者の圧倒的な熱意に衝き動かされた著者は、ここからイチョウの史料調査に正面から取り組む。記録、古文書などイチョウに関するあらゆる文献を求めて全国を歩くなか、ある郷土史家が残した一冊の本に出会う。
そこには江戸中期、将軍吉宗が引き起こした美作国・菩提寺のイチョウにまつわる村の大事件が記されていた。イチョウ関係でこれほどの古文書は世界を探しても他にないだろう。それはどんなイチョウか。また稀有な史料を書き写した郷土史家とは。歴史研究者が綴るあくなき史料探求の道。
以上