【書籍紹介】瀬田勝哉(人文学部名誉教授) 『戦争が巨木を伐った―太平洋戦争と供木運動・木造船』 (平凡社選書 236)

【書籍紹介】瀬田勝哉(人文学部名誉教授)
『戦争が巨木を伐った―太平洋戦争と供木運動・木造船』
(平凡社選書  236)
著者:瀬田 勝哉
出版社:平凡社
2021年1月刊 四六判 528ページ
定価(本体3,800円+税)★特別価格3,344円(送料込)の予約受付開始

全く知られていない太平洋戦争中の「木」と「木造船」の歴史です。
国内の平地の大木・巨木が一斉に伐られ、木造船になっていきました。日本の平地の景観はこの時点で大きく変わってしまったのです。しかしこんなことを調べた人はなく、知る人も殆ど亡くなってしまわれました。今がこの史実を調べて書き残す最後のチャンスと思い、私は専門の中世史研究を中断して6年間このことに集中しました。北海道から沖縄まで広く津々浦々まで及んだこの出来事をできるだけ多くの方に知っていただき、ご自分の周りでもまだ残っている記憶や記録をぜひ調べていただきたいと思うのです。長いのですが、ご一読よろしくお願いいたします。(瀬田勝哉)

《目 次》
はじめに  ― それは一学生の卒業論文から始まった ―
第Ⅰ部 供木・献木
第一章  太平洋戦争と「軍需造船供木運動」
第二章  供木・献木「魁」の大ケヤキ
第三章  「率先垂範」する天皇・大社寺
第四章  「巨木挙つてお召しに応じよう」
第五章  軍需造船供木運動の全国的動向
第六章  官製「国民運動」の理想と現実
第七章  メディア・文化人の動員

第Ⅱ部 木船
第八章  木船に賭ける日本
第九章  木船造船所の数と分布
第十章  木船造船所の視察と業界の提言
第十一章 漫画家の『僕の木船見学』を読む
第十二章 木船は活躍できたか

第Ⅲ部 木の終戦
第十三章 伐採された木の行方
第十四章 伐採を免れた巨木・大木

おわりに ―「木の事件史」を記憶する ―
あとがき
参考文献・資料一覧

《抄録》
ガダルカナルの敗戦が決定的になった1943(昭和18)年2月、日本政府は全国で「軍需造船供木運動」を開始する。急速に進む鉄の不足を補い、木が戦争資材として浮上する。政府は鋼船に代え木造船を緊急増産するため、山林だけでなく平地の巨木・大木にも目をつけた。一斉に屋敷林・社寺林・並木・公園・海岸林の木々の伐採供出運動が展開される。一方国内や東南アジア各地では木造船工場が新設され、規格化・簡略化された「戦時標準型木造船」の大量生産が始まる。何十年、何百年、人々の暮らしと共にあった身近な木はこうして船になったが、果たしてどれだけ役に立ったか?――知られざる戦時の木の総動員体制と木造船建造計画。日本における樹木と人の関係史上まれに見る危機的局面を、中世史家がはじめて明るみに出す、前人未踏の歴史分野の開拓。

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