武蔵学芸ネットワーク 第6回例会 2024

開催日時2024年2月3日(土)14:00~16:00
参加人数オンライン開催/19名(内学生2名)

「昭和のくらし博物館」活動紹介と参加者との意見交流
話し手:小林こずえさん(旧姓谷口、1997年日本文化学科卒業。NPO法人昭和のくらし博物館学芸員・事務局長)

武蔵学芸ネットワークは、同窓会職域部会の一つで、武蔵大学卒業生有志ボランティアを中心として、年に一度のペースで例会を開催しています。

前回までの例会では、武蔵大学卒業生の学芸員の勤務経験を聞く、あるいは、テーマを設定して意見交換するといったゼミに近いスタイルでしたが、6回目となる今回から方向性を変え、卒業生が勤務している博物館を応援するため、講師の方に自由に話題を決めていただくことにしました。
今回の講師は、東京都大田区にある「昭和のくらし博物館」学芸員の小林こずえさんにお願いしました。
対面での行事開催が可能となりましたが、講師、参加者ともに遠隔地からでも参加できるよう、Zoomでのオンライン開催としました。

「昭和のくらし博物館」は1951年(昭和26)に建てられた小泉家の住居(※同館館長であり、生活史の研究者である小泉和子氏のご家族が、45年間実際に生活していた住居)を、家の中の道具も含めてまるごと公開している博物館で、来館者は昭和30年当時の6人家族の暮らしぶりを体感することができます。私も在校生のころに学芸員課程の実習のレポートを書くために見に行ったことがあります。どっしりとした黒い木の壁が目を引く建物と、玄関の横にそっと咲いている山茶花がきれいで、入る前から貴重な場所に来たのだなと、ちょっと気を引き締めて中に入ったことを覚えています。館内も竹のざるやカゴ、千代紙、ミシンなど、今の時代ではもうお目にかかることは少なくなったものが並んでいて、昭和30年代は生活に必要なものを自分の手で作っていたことがわかる展示でした。
そんなことを思い返しながら小林さんのお話を聞いていたのですが、見せていただいた最近の館内の画像は、私の記憶とほとんど変わっておらず、「昭和の暮らしをまるごと見せる」ための研究が、絶え間なく続けられていることを感じました。
お話の中で特にそれを実感したことが2つあります。まず館長ご自身が生活史の研究者でいらっしゃるので、企画展などは学術的な研究の発表の場であり、複数の研究者が関わること。もう一つは、大学生や地域の人たちのボランティア活動、ロケ協力など、たくさんの人が絶え間なく関わる場所になっているということでした。特に後者の部分は例会の参加者の印象に残り、小林さんのお話の後の懇談会では、一人の参加者から「博物館がみんなのサードプレイス(下校後の小学生の居場所など)になっていると思った」という感想もありました。小林さんが最後に「この先25年はがんばりたい」と力強くおっしゃっていましたが、この言葉ほど博物館にとって頼もしいことはないのではないかと思います。
今回の例会はそれまでと比較してテーマ設定をやや自由にしたためか、参加者には在校生も多く、異なる世代がそれぞれの視点で感想を聞かせてくださって、とても興味深かったです。また小林さんの同窓生の方もスウェーデンから参加してくださり、オンラインで開催したことの利点を改めて実感したのでした。次回も多くの人に参加して交流していただける場として、活動を継続して行きたいです。

(報告者:木下美緒 57回日本・東アジア比較文化)

※平成30年12月以前の開催報告は、旧サイトでご確認下さい。