開催報告
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第59回土曜講座
開催日時 | 2020年2月22日(土)14:00~16:10 |
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開催場所 | 講演会:1号館1階1101教室 〈統一テーマ オリンピックの進化と素顔〉 |
内容詳細 | 【第一部】14:00~15:20 講演① ナショナリズムとスポーツ 講師:江上節子(社会学部教授) 講演② オリンピック・パラリンピックの歴史と意義 講師:清水健(第30回人文学部社会学科卒) 【第二部】15:30~16:10 対談… 東京2020の舞台裏(江上教授・清水氏) |
【第一部】14:00~15:20
(1)講演題目:「ナショナリズムとスポーツ」
講師:江上節子(社会学部教授)
・ナショナリズムは国によって違う。日本は戦後の民主主義がベースとなっている。連帯を鼓舞するものではなく、生活感に密着したものである。
・北京オリンピックは中国の国威を表す象徴だった。
・今の若者は挨拶の仕方、立ち振る舞い等、旧世代と大きく変化している。
・国家が国民を守る意思決定、政策、守れる仕組みとその体制の重要性。
・外国人居住率が他国比極端に低い日本の特異性。外国人との関わり合いの低さ。
・日本語、日本らしさ、日本固有のものが深く浸透しており簡単には変われない。
・スポーツの中にも、日本の文化と心と表象が現れている。
・レニー・リーフェンシュタール監督のベルリンオリンピックの記録映画「美の祭典」「民族の祭典」は、映像の芸術性が素晴らしい。
(2)講演題目:「オリンピック・パラリンピックの歴史と意義」
講師:清水健(第30回社会人文学部社会学科卒)
・近代オリンピックは、1896年に第一会大会がアテネで開催された。
・日本人が初めて出場したのは1912年のストックホルム。
・開催地が毎回変わるのは、世界各国にその理念等を知ってもらうため。
・日本でのオリンピックの第一人者は、柔道家の嘉納治五郎。アジア初のIOC委員になり、幻になった1940年の東京オリンピックを召致した。
・パラリンピックは、ルードヴィッヒ・グットマンが第二次大戦の傷痍軍人の社会復帰の為にはリハビリが良いのではないかと考え、1948年に車椅子でのアーチェリー大会を開催したのがきっかけ。第1回は1960年にローマで開催された。
・日本では、グッドマンに師事していた中村裕医師が困難の末、努力により始まった。その結果、第2回大会は1964年に東京で開催された。
【第二部】15:30~16:10
対談・・東京2020の舞台裏(江上教授・清水氏)・・以下敬称略
江上 なぜ、真夏の開催なのでしょう?
清水 オリンピックの放送権料をアメリカのNBCが2032年まで120億ドルという多額の金額で取得しています。そのため、アメリカのプロスポーツが開催されていない7月末から8月中旬が、オリンピックの開催期間になっているわけです。
江上 ボランティアの関わり合いについては如何でしょうか?
清水 組織委員会で8万人、東京都で3万人の方にお願いするのですが、ボランティアの方に如何に快適に活動していただくかということを先ず考えている段階です。
江上 色々な活動や催し物が内容そのものより、必要以上に演出過度になっているような気がしますが、その点は他の大会と比べいかがですか?
清水 より競技を楽しんでいただこうという、スポーツプレゼンテーションという考え方なのですが、まだ始まったばかりで少々力が入っていますね。これから洗練されてきますし、より良い方向に進んでいくと思います。
江上 アフリカでの開催はなぜないのでしょう?
清水 開催には、周辺の開発コストも含め全体で1回3兆円程の資金がかかるので、それを調達できる都市となると限られてくると思います。
江上 パラリンピックについて、これまでと違った工夫をされたとか、広報面で何か新しいものを採り入れたといようなことはありますか?
清水 スポンサーさんがアスリートのパラリンピアンを前面に出し、企業活動と合わせてのCMが多いと思います。パラリンピックをもっと盛り上げようという機運は高まっており、一昨年スポーツ庁が発表した障害者の方のスポールを浸透させようとしている方向に合致していると思います。
土曜講座が開催された約1ヶ月後の3月24日、東京オリンピックの1年延期が発表されました。今回の講演・対談を聞いて感じたのは、オリンピックが、最近は非常に大きなビジネスとなったことで、常に大きなリスクを抱えており、クーベルタンが唱えた「世界平和のための祭典」という原点に立ち戻る必要があるのではないかということです。新型コロナウイルスの不安も一掃され、来年の開催が成功裏に終わることを祈るばかりです。
(報告者:志方正和 24回社会)
※平成30年12月以前の開催報告は、旧サイトでご確認下さい。